プレスリリース

2023.03.16

地域別の青果市場価格及び小売価格の予測技術を確立

―農業データ連携基盤(WAGRI)を利用したサービス公開を予定―

株式会社ファームシップ(東京都中央区、代表取締役:北島 正裕、以下「当社」)と豊橋技術科学大学は、2者で共同設立した「AI市場予測コンソーシアム」において、農林水産省の委託事業「国際競争力強化技術開発プロジェクト※1」における「革新的スマート農業技術開発」の一環として、「AI 市場予測を活用したスマート営農支援技術の開発※2」を行ってまいりました。このほど、地域別の青果市場価格及び小売価格※3の予測技術を確立いたしました。本技術は、「なにを」「いつ」「どこで」生産・販売すれば良いかを判断するのに役立ち、廃棄ロス・機会ロスの削減や価格の安定化に貢献します。今後、農研機構が運営しております農業データ連携基盤(WAGRI) ※4を利用したサービス公開を予定しています。

1.ポイント

近年は農産物の生産技術の向上が進んでいますが、天候などの影響が大きく、毎年のように野菜の価格変動が大きく変動し、需給のアンマッチが生じています。本技術は、天候、市場動向、外部要因などから、地域別に青果の市場価格や小売価格を、予測するものです。公開されている市場や気象などのビッグデータを自動で収集し、AIで将来の価格を高精度に予測します。対象は、全国の市場価格と小売価格です。生産や販売の現場で、自社商品の需要予測に役立て、生産や出荷を調整することができます。その結果、農産物の生産や販売などの事業において、廃棄ロス・機会ロスの削減や価格の安定化に貢献します。今後、WAGRIにAPIとして実装するとともに、これを利用した一般向けサービスの公開を予定しています。

2.概要

近年、国内農業においてさまざまな企業がハードウェアまたはソフトウェアの開発、市場投入を行ってきたことにより、より効率が高い生産技術の開発が進んできています。しかし、毎年のように野菜の価格が大きく変動して、問題となっています。農産物の生産や販売は天候や天災などに影響され、供給ばらつきが大きいのが実情です。生産者は、価格低下時には出荷しても利益にならず、価格高騰時には販売機会を逸失する、というリスクを常に抱え、安定した経営が困難です。また、価格高騰時には家計への影響も大きく、農産物を通年で安定した価格で販売するということが求められています。
我々は、天候や青果の市場価格などのビッグデータを自動収集し、AIで機械学習させて解析し、市場価格を高精度に予測する仕組みを開発しました。従来の分析手法ではなく、LSTM※5などの機械学習による新たな手法を用い、高い予測精度を実現しました。本開発で、全国10市場の各5品目に対応できる仕組みを構築しました。予測期間は、週単位と月単位(図1)に対応します。前者は翌週などの収穫・販売計画に、後者は播種や販売などの月次計画に活用していただくことを想定しています。

図1 大田市場におけるレタスの市場価格の月単位予測

市場価格だけではなく、より消費者に近い小売価格も高精度に予測(図2)する仕組みも開発しました。市場価格予測は過去の天候や市場価格などをインプットとし、未来の市場価格を予測します。これに対し、小売価格予測は、総務省が行う小売物価統計調査※3の結果を利用し、地域別の小売価格を予測します。これにより、小売業者も経験と勘に頼らずとも価格を予測でき、収穫や販売計画の立案に役立ちます。その結果、生産だけでなく販売でも、機会ロスや廃棄ロスを減らすことに貢献します。

図2 東京地域のレタスの小売価格の予測

3.今後の予定

今後、本技術を広く活用いただくため、予測結果を農業データ連携基盤(WAGRI)上にAPIとして実装して公開します。WAGRI会員は、APIを利用して、自らの事業に活かしたり、アプリケーションを作成したりすることができます。また、本APIを利用したサービスの公開も予定しております。

図3 WAGRI上でのAPI公開とサービス

【注釈】
※1 プロジェクト名:国際競争力強化技術開発プロジェクト
   課題名:AI市場予測を活用したスマート営農支援技術の開発
   期間:2021年度~2022年度
   委託先:株式会社ファームシップ、国立大学法人豊橋技術科学大学
   事業概要:https://www.naro.go.jp/smart-nogyo/kokusai-kyosoryoku-kyoka-project/index.html 
※2 ニュースリリース「AI 市場予測を活用したスマート営農支援技術の開発」が国際競争力強化技術開発プロジェクトの革新的営農支援モデル開発事業に採択されました。」
   https://farmship.co.jp/news/729/ 
※3 小売物価統計調査に基づく価格
   https://www.stat.go.jp/data/kouri/index.html 
※4 農業データ連携基盤(WAGRI)
   https://wagri.naro.go.jp/
※5 LSTM(Long Short Term Memory)
   深層学習で用いられる人工回帰型ニューラルネットワークアーキテクチャーの一種。

4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
(株)ファームシップ 担当:松本 TEL:03-5829-9601
豊橋技術科学大学 総務課広報係 担当:高柳 岡崎 高橋 TEL:0532-44-6506
農研機構 基盤技術研究本部 農業情報研究センター WAGRI推進室  担当:鶴 薫 
Email:wagri@naro.affrc.go.jp 

お問い合わせ先

本件に関する取材・インタビュー、御問い合わせは下記までお願い申し上げます。

企業名:株式会社ファームシップ

E-mail: info@farmship.co.jp

Website: http://farmship.co.jp

一覧へ戻る

TOP > News > 地域別の青果市場価格及び小売価格の予測技術を確立